株主総会の招集に関する定款規定

取締役会非設置会社、取締役2名(代表取締役A・平取B)を想定して検討

(招集権者)△
第〇〇条 株主総会は、法令に別段の定めがある場合を除き、代表取締役社長がこれを招集する。代表取締役社長に事故、もしくは支障があるときは、あらかじめ定めた順序により他の取締役がこれを招集する。

このような定款は、i依頼人に誤解が生じやすい。

 

まるで「招集権者」は代表取締役Aであり、Aのみの判断で株主総会の招集ができる、と認識されがちである。
まあ、「法令に別段の定めがある場合を除き」とあるけれど、一般的にこの文言は、少数株主による招集(会297)とか裁判所がらみの招集(会307)を想像させるにとどまってしまいがち。

 

そもそも株主総会の招集決定は「取締役」が複数いる会社であれば、取締役の過半数で決定をしなければならず、定款で定めれば代表取締役1名で招集決定して通知すればよい、というものではないはず。
とはいっても、ファミリーで成り立っていて、父ちゃん代表取締役、母ちゃん取締役、株主は父ちゃん母ちゃん子どもの場合で同居なら、朝食時に父ちゃんが「今から株主総会をやろう」、「いいね」「いいね」的に全員参加かつ全員一致で平和的に行われるのであれば何の問題も生じない(株主全員の同意)。

 

株主総会の招集権者といっても、招集することの決定は、一人の取締役の独断ではできない。なお、取締役会設置会社であれば、取締役会で招集の決定をしたうえで、その決定に基づいて、代表取締役が招集権者として動いているにすぎない。

 

せっかくなので、厳密に条文文言に照らしてみると
「株主総会は、次条4項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。」(296Ⅲ)*次条4項は株主による招集の話なのでここでは無視。ここでいう「取締役」が会社に複数いる場合は
「取締役が2名以上ある場合には、株主会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決する」(348Ⅱ)
ということで、取締役の過半数で決める。
ここに「定款に別段の定めがある場合を除き」に惑わされて、定款で代表取締役のみで招集決定できるように定めればよいのではとの考えは危ない。
348条3項には、「取締役は、次に掲げる事項についての決定を各取締役に委任することができない」として、「298条1項に掲げる事項」つまり株主総会の招集の決定を掲げている。
株主総会は重要な意思決定機関であり、株主総会の招集決定は重要な業務執行ととらえられていて、株主総会をいつどこで開催するか等の決定は、あくまでも取締役の過半数で決定しなければならないことになる。
では、先の定款の代表取締役社長が招集する、の意味は、というと、多くの場合は、取締役の過半数で招集することを決定した後のお話、ということになる。
なるほどー

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