仮登記の本登記申請時の注意点

古い仮登記を本登記申請する場合は要注意

ケース

昭和40年に申請された2号仮登記を本登記する場合(現在は令和5年とする)
本登記申請対象の仮登記は
条件付所有権移転仮登記 原因 昭和40年1月20日売買(条件 農地法 の許可)

本登記にかかる登録免許税計算根拠を条文で追跡してみます。 あくまで「土地」「売買」の案件です。
まずは、登録免許税法を素直にみると

登録免許税法

(仮登記等のある不動産等の移転登記の場合の税率の特例)
第十七条 別表第一第一号(十二)イからヘまでに掲げる仮登記がされている同号に掲げる不動産について、当該仮登記に基づき所有権の保存若しくは移転の登記、地上権、永小作権、賃借権若しくは採石権の設定、転貸若しくは移転の登記、配偶者居住権の設定の登記、信託の登記又は相続財産の分離の登記を受ける場合には、これらの登記に係る登録免許税の税率は、当該不動産についての当該登記の同号の税率欄に掲げる割合から次の表の上欄に掲げる登記の区分に応じ同表の下欄に掲げる割合を控除した割合とする。
( 省 略 )
所有権のその他の原因による移転の登記 千分のニ

でも、「土地」の「売買」といえば、必ず租税措置特別法72条の確認

 

租税特別措置法72条

(土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減)
第七十二条 個人又は法人が、平成二十五年四月一日から令和八年三月三十一日までの間に、土地に関する登記で次の各号に掲げるものを受ける場合には、当該各号に掲げる登記に係る登録免許税の税率は、登録免許税法第九条の規定にかかわらず、当該各号に掲げる登記の区分に応じ、当該各号に定める割合とする。
一 売買による所有権の移転の登記 千分の十五
( 省 略 )
3 平成十五年三月三十一日以前に登録免許税法別表第一第一号(十二)ロ(3)に掲げる仮登記を受けた者が、土地について、当該仮登記に基づき第一項の規定により同項第一号の登記を受ける場合には、同法第十七条第一項の規定により控除する割合は、同項及び所得税法等の一部を改正する法律(平成十五年法律第八号)附則第二十四条第四項の規定にかかわらず、千分の三とする。

つまり、平成15年3月31日以前の条件付所有権移転仮登記の本登記を、令和になった本日行う場合、10/1000ではない。
15/1000から3/1000を控除して、12/1000 となる。

 

では、この仮登記が、平成18年1月20日になされたものだったら?

租税特別措置法72条

(土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減)
第七十二条 個人又は法人が、平成二十五年四月一日から令和八年三月三十一日までの間に、土地に関する登記で次の各号に掲げるものを受ける場合には、当該各号に掲げる登記に係る登録免許税の税率は、登録免許税法第九条の規定にかかわらず、当該各号に掲げる登記の区分に応じ、当該各号に定める割合とする。
一 売買による所有権の移転の登記 千分の十五
( 省 略 )
2 平成十五年四月一日から平成十八年三月三十一日までの間に登録免許税法別表第一第一号(十二)ロ(3)又はホ(1)に掲げる仮登記を受けた者が、土地について、当該仮登記に基づき前項の規定により同項各号の登記を受ける場合には、同法第十七条第一項の規定により控除する割合は、同項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる登記の区分に応じ、当該各号に定める割合とする。
一 売買による所有権の移転の登記 千分の七・五

つまり、平成15年4月1日~平成18年3月31日までに登記されている条件付所有権移転仮登記を令和6年に売買で本登記する場合
15/1000から7.5/1000を控除して、 7.5/1000 で計算する

 

では、平成18年4月1日以降に登記された条件付所有権移転仮登記を令和5年に本登記する場合は?

登録免許税法17条

(仮登記等のある不動産等の移転登記の場合の税率の特例)
第十七条 別表第一第一号(十二)イからヘまでに掲げる仮登記がされている同号に掲げる不動産について、当該仮登記に基づき所有権の保存若しくは移転の登記、地上権、永小作権、賃借権若しくは採石権の設定、転貸若しくは移転の登記、配偶者居住権の設定の登記、信託の登記又は相続財産の分離の登記を受ける場合には、これらの登記に係る登録免許税の税率は、当該不動産についての当該登記の同号の税率欄に掲げる割合から次の表の上欄に掲げる登記の区分に応じ同表の下欄に掲げる割合を控除した割合とする。
( 省 略 )
所有権のその他の原因による移転の登記  千分の十

つまり10/1000を控除する。で、どこからか?というと、うっかり「当該不動産についての当該登記の同号の税率欄」としてしまいがちだけれども(そうすると20/1000になってしまう)、ここでも、登録免許税法9条の特例である租税措置特別法72条1項①の15/1000から控除する。 15/1000から10/1000を控除して、5/1000となる。

 

つまり「土地」の「売買」がらみの登録免許税は、「仮登記」の場面でもあれこれ確認しないとミスるのですね

売主に相続登記がされている場合

ケース

昭和40年に申請された売主Aの不動産にある2号仮登記を本登記する場合(現在は令和5年とする)
本登記申請対象の仮登記は
条件付所有権移転仮登記 原因 昭和40年1月20日売買(条件 農地法 の許可)甲

仮登記義務者(売主)Aは、すでに死亡していて、甲区ではB相続登記がなされている場合 甲が本登記希望

 

1 登記義務者は、Bのみでよい

登記研究866号100p、273号73p
「売主を甲・・・停止条件付所有権移転仮登記をなし・・・本登記未了のまま甲が死亡し・・・相続人丙・・のために相続登記がなされている・・・当該相続登記の抹消をすることなく、丙を登記義務者としてなされた登記申請も受理することができる。」

2 添付の識別・印鑑証明書は、Bの相続登記時のもの
3 Bの相続登記は職権抹消されるが、承諾書は別途不要 (∵109条2項の類推適用=Bは申請人なので本登記を承諾している)

登記研究866号100p、458号98p、432号128p参照
「・・仮登記に次いで、相続による所有権移転登記がされた・・・本登記申請をする場合、登記義務者は相続による登記名義人・・・添付書類・・・相続による所有権移転の登記済証である」
「右相続による所有権移転の登記は法105条(現行法109条)2項により抹消される」

 

ケース例でいえば、
申請書、委任状は、登記義務者はB(相続登記されている人)とする。亡Aのなんちゃらとかいう冠書きも不要。
登記原因証明情報作成は、通常出回っている登記原因証明情報の見本どおりでOKだが、その主体はあくまでも売主Aと買主甲である。「よって、〇年〇月〇日、所有権はAから甲に移転した」 として、登記義務者Bの印

地目変更後に売主が死亡して相続登記がされている場合

パターンとしては、地目変更、売主死亡日、農転許可日の前後の組み合わせで考える。 

 

地目変更(=許可は問題とならず)→売主死亡(相続登記済)の順の場合

条件付所有権移転仮登記申請時には、地目が畑だった。後に地目が宅地に変更された場合は、所有権は地目変更日に移転しているので、地目変更日付売買で本登記する。
地目変更日が移転日なので、相続登記は本来無効な登記。しかし、登記義務者は、前記同様、相続登記されている相続人1名で足り、相続登記の抹消は不要・承諾書も不要

 

登記原因証明情報としては
①売買契約と地目が畑であることによる農地法許可条件の存在
②仮登記の特定
③令和5年5月1日地目変更事実
④よって令和5年5月1日に所有権移転
(移転は、あくまでの亡売主から。 登記義務者Bと混同して書き間違えると痛い

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