課税明細書で相続登記を済ませることは危険

相続登記には課税明細書で本当に足りるのか?

相続登記の際にかかる登録免許税は、不動産の評価額つまり固定資産の評価証明書又は課税明細書の「評価額」をもとに4/1000を乗じて計算します。

 

固定資産評価証明書は、不動産所在地の役所で手数料を支払って発行してもらいます(手数料は役所によって異なります)。また、相続人が請求する際には、自分が不動産所有者の相続人であることを証明する戸籍等の資料を掲示する必要があります。
一方、課税明細書は、固定資産税の納付書とともに毎年春に自宅へ郵送されてくるもので無料です。
どちらにも「評価額」の欄があり、その金額から登録免許税を計算することができます。

 

また、不動産登記申請には、「固定資産評価証明書」でなくとも「課税明細書」を添付すれば足りる、との案内も出ています。

 

しかし、「課税明細書」でも足りるというのは、あくまでも登録免許税の計算についてです。

 

亡くなった方が所有する全ての不動産を特定することはできません。
例えば、千葉市の「課税明細書」には、土地が2筆記載があったとします。亡くなった方が千葉市に所有する土地は、はたして2筆だけでしょうか?
2筆だけの場合もあるし、他に土地を所有している場合もあります。
では、さらに、亡くなった方がその土地を購入した際に発行された権利証(登記済証又は登記識別情報)にも、その2筆だけが記載されている、だから亡くなった方は2筆しか所有していないはずだ、と考える方もいらっしゃいます。はたして、そうでしょうか?
多くの場合は、そうかもしれません。しかし、そうでないケースもあります。

 

一般の方は、「課税明細書」に、土地2筆が記載されている場合、がんばってネット情報を駆使して、その2筆を記載した遺産分割協議書を作成して、相続人全員の実印押印をもらい、相続登記が終わって安心するかもしれませんが、プロは違います。
常に、他に土地が無いかを、役所で名寄するなどして検索をかけます。
そうすると、私道などの小さな土地が出てくることがあります。そういう土地は、固定資産税が課税されていないので、課税明細には記載がされません。

 

さらに、当時の売買契約書や登記済権利証も2筆のみの記載であったとしても、購入後に地域のゴミ置き場などの小さな土地を取得しているケースもありました(その権利証も一緒に保管されていれば土地が2筆ではなく3筆であることがわかったかもしれませんが、その権利証は見当たりませんでした)

 

となると、努力して2筆の登記が終わっていたとしても、数十年後、その土地を売買する際に、その小さな土地の存在が発覚することになります。当然、その小さな土地の名義は亡くなった方のままです。通常はその土地も一体として取引される性質のものなので、そのままでは売買ができなくなります。さらに、年月の経過により、当時の相続人とも連絡が取れないとか、既に亡くなっている、ということになりかねません。
このような場合、たとえ小さな土地でも、数十年前に登記をプロに依頼したらかかったであろう費用よりもかなり過大な負担が生じるおそれがあります。

 

ちなみに、そのような小さな土地は、租税特別措置法第84条の2の3第2項の適用期間であれば、登録免許税は非課税になることが殆どなので、登録免許税の計算自体には影響がないかもしれません。

 

しかし、たとえ「課税明細書」で登録免許税が計算できたとしても、役所での名寄は重要な意味を持ちます。

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