景品交換所と古物商論争(国会編)
そもそも特殊景品交換所は古物商営業許可が必要なのか、まともに答えられる人はどこにいるのか

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パチンコ景品買取所(景品交換所)の営業に、古物営業法に基づく古物商許可申請は必要なのか論争

ちなみに、正しくは、「景品」ではなく、「賞品」です。ここでも「パチンコ賞品」「特殊賞品」と記載すべきですが、特殊「景品」の言葉の方が馴染みやすいので「景品」と記載しています。また、「交換所」ではなく「買取所」と記載すべきでしょうが、馴染みのある「交換」と記載します。

 

この論争を読み解くためには
1 特殊景品とは具体的に何なのか?本物の金が入ったプレート?それ以外のものは?しおりは?
2 それは古物営業法上の「古物」にあたるのか?
3 そもそも古物営業法上の「古物」にあたるものと、あたらないものに分けられる問題なのか?
4 古物営業法の適用除外なのか?・・・・など

 

さらに、ややこしいことに、令和5年10月1日から始まるインボイス制度による影響による混乱。
私は、税理士でもないので、インボイスがらみの問題はここでは触れません。

 

いずれにせよ、ネット上には、あいまいな言葉でそれらしく書かれている情報が多いので、注意が必要だということです。

 

取扱う特殊景品なるものを 「地金」にあたるからと限定して、「地金」は、古物営業法上の13品目には該当しないので古物営業法上の許可は不要だと言い切ったとしたら、じゃあ、それが本物の金じゃない場合、メッキ物が入っている単なるプレートやペン、スティックだったらどうなるんですか・・・などと続いてしまいます。

 

(定義)
第二条 この法律において「古物」とは、一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み、大型機械類(船舶、航空機、工作機械その他これらに類する物をいう。)で政令で定めるものを除く。以下同じ。)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。

 

解釈基準をみると

「使用」とは、物品をその本来の用法に従って使用すること
「使用のために取引されたもの」とは、自己が使用し、又は他人に使用させる目的・・・

 

「本来の用法」とは、、栞は本に挟むしおりとして、ペンは筆記用具としてって意味ですよね。本来の用法として使えないように密閉された栞と書かれたものは???

 

ここで重要となるのが、古物営業法の目的です。

 

(目的)
第一条 この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。

 

この目的を持ち出した国会での、「景品交換所は古物営業にあたるのか」という質疑応答が面白いので見てみましょう。

 

警察庁生活安全局長の応答

第196回国会 参議院 内閣委員会 第24号 平成30年7月5日 議事録より

 

参議院議員と政府参考人警察庁生活安全局長のやりとりです。

 

「景品交換所は古物営業にあたるのではないですか?」と議員からの質問に対して

 

「いわゆるパチンコの賞品買取り所につきましては、古物営業の許可を取得する必要はございません。」と当時の警察庁生活安全局長答えられています。

 

そうすると、議員が、景品がブランドバックの場合はどうか?と尋ねたのに対して、その買取には、古物商の許可は必要であるとの答弁がなされています。そもそもここでの質疑応答は、「ギャンブル依存症対策」に関連したものなので、ブランドバックが持ち出された時点で、景品交換所特有の論点がずれてしまいました。いわゆる特殊景品と一般景品、一体どちらの話をしていたのか・・・

 

一般人が持ち込んだブランドバックを買取する場合は、その営業所がパチンコ特殊景品の交換所であろうがなかろうが、どこで賞品として取得したものであろうが、古物商の許可申請は必要でしょう。いっそ、「頑丈に密閉された栞」とかで質問して欲しかったです。

 

では、別の質疑応答を見てみましょう。

 

警察庁長官官房審議官の応答

第198回国会 参議院 内閣委員会 第6号 平成31年3月28日 議事録より

 

同じ議員の質問に対して、今回参考人は、警察庁長官官房審議官です。

 

議員の
「賞品買取り所は、パチンコ賞品を客から買い取り販売するという営業をしています。個人の所有物の売買を営業とすることは、古物営業の許可がなければできません。なぜ賞品買取り所は対象外なんですか。」
との質問に対して

 

政府参考人警察庁長官官房審議官が
「お尋ねのいわゆるパチンコの賞品買取り所につきましては、古物営業の許可を取得する必要はないと認識しております。
 古物営業法は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もって窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的としているところであります。
 古物営業法のこのような趣旨に鑑みれば、窃盗等の犯罪の被害や盗品等の処分の実態が認められないパチンコの賞品につきましては、これを買い取ることについて古物営業法の規制を及ぼす必要は認められないと考えているところであります。」
と答えています。

 

質問の「個人の所有物の売買を・・・」という部分もざっくりすぎて不明確な表現内容ですが、古物営業法上の「古物」の定義にあたるのかあたらないのか、一般人には不明確なまま質疑応答は進み、立法趣旨から古物営業法の規制が及ばない、と回答されています。

 

この後、「窃盗等の犯罪の被害や盗品等の処分の実態が認められないパチンコの賞品」の部分に強く反応された質問が続くわけですが、そこで、国家公安委員会委員長の回答が出ます。
見てみましょう。

 

国家公安委員会委員長の回答

第198回国会 参議院 内閣委員会 第6号 平成31年3月28日 つづき

 

(国家公安委員会委員長・内閣府特命担当大臣(防災)の回答

 

「パチンコの賞品につきましては、先ほども御答弁したとおりでございますけれども、盗品等の犯罪の被害や盗品等の処分の実態が認められないことから、これを買い取ることについて古物営業法の規制を及ぼす必要は認められないものというふうに考えておりまして、お尋ねのいわゆるパチンコの賞品買取り所につきましては古物営業の許可を取得する必要はないというふうに承知をいたしております。」

 

パチンコ特殊景品交換所(賞品交換所)は古物商許可不要

このように、第198回国会 参議院 内閣委員会 第6号 平成31年3月28日において
当時の警察庁生活安全局長、警察庁長官官房審議官、国家公安委員会委員長・内閣府特命担当大臣(防災)がそろって、

(目的)
第一条 この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。

を持ち出して、特殊景品交換所(「パチンコ賞品買取所)」は、古物営業の許可を取得する必要はない、と言っています。

 

もっとも、その交換所(買取所)が、時計やブランドバック等も買取をするのであれば、それは別のお話で、古物営業法の規制を受ける、ということになります。

 

二つの議事録における上記の議員質問は、物の定義があいまいなまま進んでいる点が、これまでの古物商許可申請に関するネット情報の混乱をうまく表していると思います。
賞品買取所と言われる営業所の呼び名を、「〇〇専門買取所」として、この「〇〇」部分に買取する物を実態に合わせて限定的に特定して表現ができるのであれば、公安委員会委員長の回答ですっきりと古物営業許可の対象外だと理解ができるのでしょうが、買取する物を限定的に表現できないところがいわゆる三点方式の苦しいところなのでしょうか?

 

他方で、主に、ブランドバックなどの一般物品を買取する一般の古物商営業所に、この特殊景品が持ち込まれた場合は、どのような法的取扱いになるのでしょうか?古物商登録した品目に該当する物品として買取するのでしょうか?それとも、自分は古物商だけど、持ち込まれた特殊景品は「金」だから「古物」ではないとするのでしょうか?中身が本物のゴールドなら金でも良いかもしれませんが、中身がイミテーションならそもそも買取しない?それとも道具類とか何かの品目にあてはめて買い取ってそれから・・・という選択でしょうか?疑問はつきませんが、さすがにそこまでは議論されませんでした。

 

いずれにしても
「第196回国会 参議院 内閣委員会 第24号 平成30年7月5日」 「第198回国会 参議院 内閣委員会 第6号 平成31年3月28日」の議事録は、容易に閲覧することができますので、ぜひ一度お読みになって下さい。
質問内容を、いわゆる一般賞品と特殊賞品に頭を整理して読んでみると、色んな意味で面白い内容となります。

 

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インボイス制度における古物商特例問題は別の話です

インボイス制度の開始に向けて、古物商特例対象となるために古物商営業許可を取得する必要があるとの話を聞きました。いったいどういうことでしょうか?

 

古物商(既に古物営業法の規制を受けている事業者)が、古物営業法上の「古物」に該当しないもの(地金とか)も、「古物」に「準じるもの」として、古物と同等の取引方法で買い受ければ、古物商特例が受けられる、これはなんとなく理解ができます。

 

では、先述のように、古物営業法上の古物商ではない、許可は不要ですよ、と公安から言われている事業者が、古物に該当しないアレを一般人から買い受ける場合に直面する問題、これに対応する策としてささやかれている方法はいったいどういう構成なのでしょうか?

 

まだ数か月あるとはいえ、公式ガイドラインも無いまま(特殊業界に向けた税務署の公式ガイドラインは無理だとしても)、業界内部マル秘通達でもあるんでしょうか?

 

記載途中・つづく

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