相続人申告登記

令和6年4月1日より前に相続が開始している場合で
遺産分割協議が終わっている場合は、令和9年3月31日までに、相続登記を行う必要があります。遺言書がある場合も同様です。
遺産分割協議を行う予定がない場合、遺産分割協議がまとまりそうにない場合は、令和9年3月31日までに、「相続人申告登記」を行う必要があります。業として依頼を受けることができるのは「弁護士」又は「司法書士」です。

 

相続人申告登記

遺産分割協議がまとまらない、など、相続登記を申請できる状態でない場合であっても、「相続人申告登記」を行えば、相続登記の申請義務を履行したことになり、過料に処されることはありません。

 

不動産登記法第76条の3
(相続人である旨の申出等)
 前条第1項の規定により所有権の移転登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
2 前条第1項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第1項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。

 

なお、遺産分割協議がまとまっているのに相続登記をしていない場合は、相続人申告登記による相続登記義務履行のみなし対象とはならない。この場合は、「正当な理由」がある場合をのぞき、相続登記を行う必要があります。

 

相続人申告の登記方法について

相続人申告登記は、①申出をした人の氏名・住所が登記簿に記録されます。書き方は下記のとおりです。
権利を対抗するものではないので、相続登記と異なり、簡便な手続き方法がとられています。

 

・登録免許税は非課税
・相続人自分一人で行うことができる(他の相続人の協力は不要)
・提出書面に押印は不要
・戸籍等の相続証明書類は、申出人が登記名義人の相続人であることが確認できればよいので、相続手続きのように出生まで遡って戸籍を収集する必要はない。
・申出人・中間相続人の住民票・除票の写しなどは、登記官が住基ネットで確認できれば、不要となる*住民基本台帳法30条の9の要件あり

(国の機関等への本人確認情報の提供)
第三十条の九 機構は、別表第一の上欄に掲げる国の機関又は法人から同表の下欄に掲げる事務の処理に関し求めがあつたときは・・・政令で定めるところにより・・・のうち住民票コード以外のものを提供するものとする。

相続人申出書の記載方法

以下、事務事項

 

相続人申告登記 申請書・申出書の書き方

 

相続人申出書(記載例)
申出の目的 相続人申告
〇〇(=所有権登記名義人)の相続人
相続開始年月日 年月日(=死亡日) *数次相続の場合も登記名義人の死亡日を書く
   <<*数次相続の場合は、申出人が承継することになった第一次相続人の住所氏名を挿入記載する
(申出人) 住所 氏名 *住民票どおりに記載する(住民票コードを記載しても住民票添付を省略することはできない) 
   (氏名ふりがな ・・・)
   (生年月日・・・) *記載する場合は住民票添付不要となる 本人申告の場合は連絡先電話番号も記載する
  <<*数次相続の場合は、(申出人)を再度記載して、住民票添付省略する場合にはこちらの方にふりがなをカッコ書きすればよい。
添付情報
 相続人であることの証明情報
 住所証明情報(*)
 代理権限証明情報 
年月日申出 〇〇法務局
代理人 事務所 司法書士名 電話番号
不動産の表示
 土地の場合は、所在・地番、建物の場合は、所在・家屋番号で足りる。不動産番号のみも可

 

相続人申出書に添付する委任状の記載方法は、日常使用している登記委任状スタイルをアレンジすれば足りるが、いつもの登記完了証受領云々のように、「登記完了通知の受領」と記載すれば良いとはず

今後の通達で詳細確認要

 

申出人書面申請の場合は押印不要。とはいっても、書面申請の場合は、その申出書の訂正・削除をする場合は、定められた方法で行う必要がある(規158の10③)申出書が複数枚になる場合は、1/2、2/2のようにページ数を記載する必要がある。
司法書士が代理人として申出する場合の委任状には、依頼人(申出人)の押印・署名を要しないらしいが、実務上は要求する司法書士が多いはず。
申出の際に司法書士が職印・電子署名をする必要があることは他の申請と同じ。
郵送の場合は、他の申請と同様の手段で、封筒表に「相続人申出書在中」などと記載。 受領書の請求も可。
相続関係説明図の提出により、戸籍等の原本還付が可能な点は、従来の相続登記と同じだが、相続人申出の場合の相続関係説明図は、登記名義人と申出人との関係が明記されれば足り、申出人以外の者は、記載を省略することができる。全ての相続関係を明記する必要はない。相続関係説明図に住所も記載すれば、住民票のみ原本還付用のコピーをとるなどの手間は不要となる。
複数のオンライン申請の場合、連件設定ができないので、連件扱いとする旨の記載をする
申出人の氏名のふりがな及び生年月日を記載した場合は、住民票の写しなどの住所証明情報の添付は不要、とあるが、相続人申告の相続人申出書には、住所・氏名を住民票に記載されているとおりに正確に記載することが要求されている点で、あらかじめ住民票のコピーのみもっているケース以外は、申出時はメリットがないようにも思えるがどうなのか?
不動産が複数、申出人が複数の場合の一括申出の要件は、一括申請とほぼ同じ
同一管轄内で、被相続人名義の不動産甲・乙があり、相続人ABが同時に申出する場合は、一括申出できる

 

法定相続情報一覧図の写しも戸籍等の代わりに添付情報として利用ができるが、登記記録上の住所・氏名が異なる場合には、その同一性を証明する資料を添付する必要がある。
先順位が相続放棄をしたことにより次順位の者が相続人申出をする場合は、相続放棄申述受理証明書が必要。

 

先に、別の相続人が相続人申告を既に行っている場合は、登記により被相続人の相続開始日が明らかであるから、その後別の相続人が相続人申告を行う場合は、戸籍上の被相続人の氏名・死亡日と登記上の相続開始年月日と氏名の一致があれば、同一性を認めることができる。

 

今後の通達で詳細確認要

 

相続人申告登記に登録免許税はかからない

最後の住所が不明の場合

数次相続の場合は、中間相続人の最後の住所の記載が必要。しかし、最後の住所証明は取得できない場合が多いと思われる。その場合は、中間相続人の最後の本籍地の記載があれば、それを最後の住所とみなされるとのこと。

 

相続人申告の登記の後で相続登記を行う場合

まず、相続人申告登記の抹消は、その登記名義人のみ可。しかし、相続人申告登記を抹消しなくても相続登記は可能。また相続人申告登記名義人の名変なしに、相続登記も可能。

 

相続登記の義務と過料

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