遺言書情報証明書の交付等(遺言者が亡くなった後)
法務局における遺言書の保管等に関する法律施行後は同法第9条により、遺言者の相続人等は遺言書情報証明書の交付請求ができます

亡くなった方がそもそも遺言書を書いたのかが不明な場合、A 自宅、貸金庫などの個人的スペースを探す、B 公証役場で調査する、C 法務局で保管されているか調査する方法があります。戸籍収集から公証役場での遺言検索・謄本取得代行、法務局への遺言書保管事実証明書、遺言書情報証明請求に関する書類作成などは司法書士に依頼することができます。

 

C 法務局に保管、すなわち自筆証書遺言保管制度を利用して法務局に手書きの遺言を預けてあるかどうかを調査する方法は、1「遺言書保管事実証明書」請求の問題となります。
*なお、「何人も・・・遺言書保管事実証明書・・・の交付を請求することができる」の条文の実体的意味を勘違いしている方が多い点には注意が必要です。

 

亡くなった方が法務局に遺言書を預けたときの保管証がある場合は、1「遺言書保管事実証明書」の請求をとばして、ただちに 2「遺言書情報証明書」の請求の問題となります。

 

請求場所は、最寄りの保管場所(法務局)でかまいませんが「予約」必須です。
この「予約」には注意が必要です。例えば、1 遺言書保管事実証明書 の予約をして法務局に出向いて、その場で保管事実が判明したとします。その流れで別枠の予約をせずに 2 遺言書情報証明書 を請求することはできません。別枠の予約を行っておく必要があります。郵送による請求も可能です。*詳細は法務局へご確認を

 

遺言書保管事実証明書の交付請求 必要書類

手書きの遺言書が遺言書保管所(=法務局)に預けられているかどうか、は遺言書保管事実証明書を請求します。1通800円。最寄りの法務局窓口で請求(予約要)するか、郵送で行います。

 

相続人が行う場合の必要書類は

死亡事実記載ある戸籍 ★法定相続情報一覧図
相続人であることを確認できる戸籍(請求人)★法定相続情報一覧図
 住民票(請求人)▲法定相続情報一覧図
交付請求する人の本人確認情報 免許証など *窓口の場合

★法定相続情報一覧図に請求人の住所記載がある場合は、法定相続情報一覧図1枚あれば足り、戸籍や住民票は不要です。
★遺言書保管事実証明書により、遺言書が保管されていることが確認できた場合、保管されていなかった場合、いずれにおいても、自分が相続手続を行う必要がある場合には、戸籍の代わりになる「法定相続情報一覧図(住所記載あるもの)」を用意しておくとその後の全ての手続きがスムーズになります。
法定相続情報一覧図 をご希望の方はこちら

 

「遺言保管事実証明書の交付請求書」をみると、「遺言書が保管されている遺言書保管所の名称」「保管されている遺言書の保管番号」の記載を求められるように思えますが、保管しているかどうか不明な状況で記載はできませんので、空欄のままでかまいません。

 

添付した法定相続情報一覧図や戸籍などの書類は原本還付が可能です。

 

遺言書情報証明書の交付請求 必要書類

遺言者が死亡した後は、遺言者の相続人、受遺者は、遺言書が保管されているかどうか、1 「遺言書保管事実証明書」のほか、
具体的にどのような遺言なのか、遺言書の画像処理された写しである 2 「遺言書情報証明書」の発行を請求します。
相続人等は、2 「遺言書情報証明書」で、遺言内容の確認、その実現として預金解約、登記などの相続手続を行います。ちなみに、遺言書保管場所(どこの法務局に預けたのか)、保管時に発行された「遺言書の保管番号」が不明の場合は、1 「遺言書保管事実証明書」の請求を先に行い、それをもって 2 「遺言書情報証明書」の請求を行うことになります。

 

相続人が請求する場合の必要書類は次のとおりです。司法書士に法定相続情報一覧図の取得を依頼することもできます。

法定相続情報一覧図の写し
又は
遺言者の出生から死亡記載ある戸籍一式及び 相続人全員の戸籍

相続人全員の住所証明情報 (一覧図に相続人全員の住所記載があれば不要)
交付請求する人の本人確認情報(郵送:本人による免許証等の原本証明したものでも可)

 

結局、遺言者の出生から死亡記載ある戸籍一式及び 相続人全員の戸籍 相続人全員の住所証明を取得しなければならず、添付する必要書類の煩雑さは、自筆証書遺言の検認申立の場合と変わりません。戸籍等一式も登記申請時のような「生殖可能年齢以降のもので足りる」とかいう軽減もありません。

 

同じ自筆証書遺言でも、法務局保管制度利用の場合は、面倒な家庭裁判所での「検認」手続は不要となるので、一見良い制度にも思えますが、遺族の立場になると負担がかかります。やはり「公正証書遺言」にはかないません。

 

遺言書情報証明書の交付請求書の記載事項

遺言書情報証明書を請求する際の「交付請求書」には、主に次の事項を記載します。

 

請求する人について 
氏名、生年月日(法人の場合は会社法人等番号)、住所 電話番号

 

遺言者(亡くなった方)について
氏名、生年月日、住所、本籍、死亡年月日、遺言書が保管されている法務局名、遺言書の保管番号

 

遺言書が保管されている法務局と遺言書の保管番号は、
遺言者が法務局に遺言書を提出した際に交付を受けた「保管証」に記載されています。ので、その保管証があればすぐ記載できます。

 

それが見当たらない場合は、相続人等から法務局に対して、「遺言書保管事実証明書」の交付申請をします。

 

「遺言書保管事実証明書」には、遺言保管の有無、
保管があれば、遺言書作成年月日、遺言書が保管されている法務局(遺言書保管所の名称)及び保管番号が記載されています。

 

もっとも「遺言書保管事実証明書」の請求をする場合、基本的には、亡くなった遺言者の死亡記載ある戸籍と自分が相続人であることを証明できる戸籍等を添付する必要があります。
ただし、すでに遺言書を保管している旨の通知書などがある場合は、その通知(写し)を添付すれば死亡を証する戸籍は不要です。

 

相続人に遺言書原本は返却されません

死後、法務局で保管された遺言書原本は、相続人であっても、返してもらえません。
遺言書の原本それ自体は、保管されている場所での閲覧ができるのみです。
モニターを通してみる場合は、最寄りの法務局でみることが可能です。

 

つまり・・・遺言作成者が厳選した和紙に毛筆で心を込めて書いても、それを法務局に預けた場合、その和紙の遺言書は遺族の手元にわたることはありません。

 

死亡時に遺言を保管している旨の通知がくるかもしれません(死亡時通知)

遺言保管者が死亡した場合に関連して、相続人等にくる通知としては、2種類あります。
①関係遺言保管通知 と ②死亡時通知です。

 

②の死亡時通知は、遺言が保管されている事実をいち早く伝えたい人宛てを想定しています。
①とは異なり、②は、遺言者が生前に通知を希望している場合のみです。遺言者は、自筆証書遺言書を法務局で保管する申請をする際に、その保管申請書の中で、自分が死亡した時に、遺言書を保管している旨を通知する人を3名指定することができます。保管申請時に、希望にチェックを入れる箇所があります。
遺言者が指定できる人は、受遺者、遺言執行者、推定相続人に限定されません(改正)。
遺言検索にあたる遺言保管事実証明書を請求した際にも通知が行われます。
法務省HPによれば、「戸籍担当部局と連携して遺言書保管官が遺言者の死亡の事実を確認した場合に」通知するとありますが、具体的にどのように運用されているのかは不明です。

 

一方、①関係遺言書保管通知は、相続人が遺言書情報証明書の交付請求をした際の他の相続人等への通知です。

 

遺言書情報証明書発行手数料

遺言書情報証明書の発行手数料は、収入印紙を購入して所定の手数料納付用紙に貼ることになります。

 

遺言書情報証明書の交付請求一通 1400円 です

 

その他 自筆証書遺言保管制度に関する手数料は次のとおりです。
なお、遺言の保管申請を撤回・変更すること自体に関する手数料はかかりません
遺言書の保管の申請 一件 3900円
遺言書の閲覧の請求 一回 1400円
遺言書の閲覧の請求(原本) 一回 1700円
遺言書保管事実証明書の交付請求一通 800円
申請書等・撤回書等の閲覧の請求 一の申請に関する申請書等又は一の撤回に関する撤回書等で1700円

 

遺言書保管事実証明書は誰でも請求できる、という意味

(遺言書保管事実証明書の交付)
第十条 何人も、遺言書保管官に対し、遺言書保管所における関係遺言書の保管の有無並びに当該関係遺言書が保管されている場合には遺言書保管ファイルに記録されている第七条第二項第二号(第四条第四項第一号に係る部分に限る。)及び第四号に掲げる事項を証明した書面(第十二条第一項第三号において「遺言書保管事実証明書」という。)の交付を請求することができる。
2 前条第二項及び第四項の規定は、前項の請求について準用する。

 

ここに「何人も」とあり、誰でも、亡くなった方が遺言書を法務局に預けたかを確認できる、と読めます。イエスでもありノーでもあります。
例えば、甲野犬郎さんは、自宅右隣の乙田花子さんに別荘を遺贈、その他の財産全てを妻甲野猫子に相続させる手書きの遺言書を法務局に預けていたとします。
さて、甲野太郎さんの左隣に住む、佐々木洋子さんは、甲野太郎さんの死後、遺言書保管事実証明書を請求して、”甲野太郎さんがその遺言書を法務局に保管した”という事実を確認することができるでしょうか?甲野太郎さんが遺言書を保管していることは事実で、条文上「何人も」と書いているので、できるようにも思えます。しかし、答えはNOです。
本件で佐々木洋子さんが甲野太郎さんについて「遺言書保管事実証明書」を請求した場合、「・・・保管されていないことを証明する」と記載された証明書が発行されるだけです。より具体的には、請求人(佐々木洋子)を受遺者・遺言執行者とするような内容の遺言書は保管されていません、との証明書となります。甲野犬郎さん作成の遺言書が1通保管されているとの内容が、請求者の佐々木洋子さんに交付されることはありません。なお、乙田花子さんが請求した場合は、保管されている旨の証明が出されます。

 

証明書取得準備は司法書士に依頼することができます。

遺言書情報証明書の取得は、法務局窓口申請、郵送請求、法定代理人請求が可能です。
遺言情報証明書の請求に必要な書類の準備、交付請求書の作成は、司法書士に依頼することができます。
戸籍等、法定相続情報も含めておまかせください。

 

司法書士が資格者として交付請求書を作成する場合は、備考欄などに司法書士名を記載して職印を押すことになっています。
なお、遺言書情報証明書の請求「受領」ができる代理人は「法定」の代理人であり、士業が代理で受領することはできません。「法定」代理人、つまり、成年後見人とか未成年者の親権者などの場合に限定されます。法務局窓口は平日の予約が必要ですので、平日時間のない一般の方はご自宅へ証明が返送される郵送請求になると思われます。

 

 

添付書類の原本還付

添付した戸籍、法定相続情報一覧図、住民票などは原本還付が可能です。

(添付書類の原本還付)
第八条 申請等、法第八条第一項の撤回又は閲覧請求等をした者は、申請書、届出書、撤回書又は請求書の添付書類の原本の還付を請求することができる。
2 前項の規定により原本の還付を請求する者は、原本と相違ない旨を記載した謄本を提出しなければならない。
3 遺言書保管官は、書類を還付したときは、その謄本に原本還付の旨を記載し、これに押印しなければならない。

 

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